あらすじや感想を添えてご紹介します。
ぜひ、あなたの心に残る作品をみつけてください。

壊れる男たち −セクハラはなぜ繰り返されるのか−

金子 雅臣
岩波書店 2006年


作者は、東京都勤務で長年にわたり労働相談の仕事に従事する一方、社会派のルポライターとして活躍し、セクハラ問題では第1人者として講演活動等に取り組んでいる。

「合意だったはず」「自然のなりゆきで」—告発されて「加害者」となった男性たちは、事態を理解できず、相変わらずの言い訳を口にすると茫然と立ち尽くす。彼らはなぜ自らの加害性に無自覚なのだろうか。相談現場で接した多くの当事者の声を通して、「セクハラをする男たち」の意識のありようを探るノンフィクション。

 

ミレニアム

スティーグ・ラーソン 翻訳:ヘレンハルメ美穂/岩澤 雅利
全3巻(各上下巻あり 全6冊)
早川書房 2008年


福祉国家で平和なイメージを持つスウェーデンが舞台。しかし、女性への暴力、特に性的虐待という社会的テーマがこの小説の中にうごめいている。司法や警察など様々な権力と闘いながら女性への人権侵害を暴いていく。とにかくおもしろい!読み始めたら止まらない!フェミニストならぜったい読んでほしいハードボイルド小説である。

 

男よりテレビ、女よりテレビ

小倉 千加子
朝日新聞出版 2008年


かつて、故ナンシー関がたくさんのテレビ番組についてなんともおもしろい批評を書いた本を出しているが、この本もまた独自の鋭い批評で「テレビの見方」を教えてくれる一冊と言える。ジェンダーの視点がしっかりと感じられてナンシーもの以上におもしろい。テレビ好きにはお勧め。それにしても忙しい小倉先生、いったいいつテレビを見ているのだろう。

 

自分でできるカウンセリング 女性のためのメンタル・トレーニング

川喜田 好恵
創元社 1995年


人との関係に悩んだとき、ちょっと立ち止まって自分のことを考え直したいとき、そんな時に助けてくれるのがこの本です。HWCが勧めているアサーティブトレーニングや自己尊重の基礎となる考えを丁寧にわかりやすく書いてあります。今日の自分を知って、違った明日を生きるあなたのための1冊です。

 

コスプレ女子の時代

杉浦 由美子
ベストセラーズ 2008年


本書は、フリーランス記者・ライターとして、雑誌やWEB上で女性向けコンテンツ、流行現象、ビジネス等の取材・執筆を幅広く行っている著者が、今の若い女性の中で日常化している“コスプレ”をルポし、それを分析をしているものである。以前は嫌われていた「裏表がある性格の女性」が、今では「オンとオフを切り替える女性」「ギャップがある女性」として共感され、皆率先してそれを取り入れている。そして場面ごとに、オン・オフを切り替え、身に着けるものを変え、自分が打出す印象を変えていき、それらがコスプレを伴っている。何故コスプレを伴うかは是非読んで解明して欲しい。読み進むうちに、コスプレという切り口から若い女性の置かれている現状が見えてくる。冒頭、「女性の品格」が10代、20代の女性に受け入れられメガヒットを飛ばしたのは、彼女らがコスプレマニュアル書として支持したからであるという分析はとても面白い。

 

フェミニズムはみんなのもの 情熱の政治学

ベル フックス 翻訳:堀田 碧
新水社 2003年


フェミニズムという言葉で、なんとなく引いてしまう、避けて通りたくなる人がいるだろう。
著者はこの本をそんな人のために著したという。“性に基づく差別や搾取や抑圧をなくす運動”この定義を気に入っているとベル自らいうのは、男性に反対する運動ではないという事を明示している点である。70~80年代アメリカで黒人女性としてフェミニズムの中の階級性、人種、セクシュアリティなどの視点を強調している。19章に分けられ読みやすい。

 

介護とジェンダー 男が看とる女が看とる

春日 キスヨ
家族社 1997年


この本は介護保険制度が始まる以前に書かれているが、介護保険を見据えて書かれたのではないかと思えるくらい著者の指摘は鋭い。
一部を紹介すると、「男性が担えば高い賃金が支払われる労働であっても、女性が担ったとたんに低賃金にし、それを合理化する論理が総動員され、・・」、「“母性”という文化装置による女性搾取は、巧妙にしくまれているのである。」、「家族を搾り取るキータームが“愛情”である。」等々、10年前に書かれたものとは思えない。

 

オリエンタリズムとジェンダー「蝶々夫人の系譜」

小川 さくえ
法政大学出版局 2007年


「西欧における日本女性のイメージはいかにして形成されたか・・・・。」
19世紀後半、ジャポニスムがヨーロッパを席捲した時代にフランスの作家ロティの小説「お菊さん」が人気を博したが、それを土台にして生まれたいくつかの作品を経てプッチーニの「蝶々夫人」が作られた経緯は興味深い。いずれの作品も西洋人男性の視点で東洋人の野蛮性・凶暴性・珍奇性を描いており、それらは西欧の享楽の対象として表現していると作者は分析している。それから後の作品「バタフライ」「M・バタフライ」の展開もジェンダーの本質を探るものである。成る程と納得しながら読み進めることができる。
「蝶々夫人」を内面化した(?)我々には必読の書。

 

結婚帝国 女の岐れ道

上野 千鶴子/信田 さよ子
講談社 2004年


社会学者 上野千鶴子さんと、長年依存症・家族の問題に取り組んできたカウンセラー信田さよ子さんが率直に語り合った対談集。
フェミニズムの論客上野千鶴子さんが、現場を知り尽くすカウンセラー信田さよ子さんという気脈相通じる対談相手を得て縦横に語り尽くしていて面白い。絶妙のコンビだ。

 

疑問スッキリ!セクハラ相談の基本と実際

周藤 由美子(ウィメンズカウンセリング京都)
新水社 2007年


この1冊でセクハラ相談に自信が持てます。基本知識から対応・再発防止までわかりやすく書いてあり、現場で即使える実用書。担当者だけでなく企業や大学関係の全ての方、必見です!

 

実践するフェミニズム

牟田 和恵
岩波書店 2001年


セクハラ、性暴力、売春とポルノという三つの「練習問題」から成り立っている。これらの練習問題について考えて行くことで、私たちは自分と社会を見ていくことになるわけだが、それは女性たちのエンパワメントにつながるだろう。とてもわかりやすく書いてあるが内容は盛りだくさんのお得な一冊。

 

うめめ Today's Happening Ume-me

梅 佳代
リトルモア 2006年


2006年度第32回木村伊兵衛写真賞受賞。
『うめかよ!彼女は最高。出会えてハッピー!そしてラッキー!!最強ご近所写真!』とは帯での紹介。
突き抜けたキャラクターの持ち主である彼女は、どんな時もカメラを首から提げて歩き回る。そして誰もが見過ごしてしまう瞬間をカメラで氷結保存する。梅の眼を通したそれらの写真からは人々の声が生き生きと聞こえて来る。こちらからも彼らに話かけたくなる不思議な空間を味わって欲しい。

 

99.9%は仮説 思い込みで判断しないための考え方

竹内 薫
光文社 2006年


私たちが“常識”“ふつう”と考えている事は本当に“常識”“ふつう”なのか。何を基準にそう考えるのか。仮説だらけの人間世界を分かりやすく教えてくれる目から鱗の一冊です。
(ちなみに著者は、たけしの深夜番組「コマネチ大学数学科」に怪しいおじさんとして出演。)

 

大切な人を亡くした子どもたちを支える35の方法

ダギーセンター
(全米遺児遺族のためのグリーフサポートセンター)
梨の木舎 2005年


大切な人を亡くした子どもたちの「内面で感じていることと外に見せている顔は違う」という指摘と「人はそれぞれ皆悲しみかたがちがう」のだという指摘は示唆に富む。喪失を体験せずに済む人はほとんどいない。大人にとっても有効な本だと言える。

 

ブッタとシッタカブッタ〈2〉 そのまんまでいいよ

小泉 吉宏
メディアファクトリー 2003年新装版


これは、マンガです。マンガといってあなどれない、「心」をかたる本です。この本を読むと、仏教という哲学が多くの人を救ってきた理由がちょっとばかりわかるような気がします。心が楽になるでしょう。

 

生きる勇気と癒す力 性暴力の時代を生きる女性のためのガイドブック

エレン・バス/ローラ・デイビス 翻訳:原 美奈子/二見 れい子
三一書房 2007年新装改訂版


「本書は、当事者によるPTSDからの回復過程の書である。サバイバーに対する決め細かな配慮と具体的な提案は、 当事者でない専門家には決して書けないものである。」
井上摩耶子(ウィメンズカウンセリング京都)

 

トガニ 幼き瞳の告発

孔 枝泳(コン・ジヨン) 翻訳:蓮池 薫
新潮社 2012年


2005年、韓国南部の聴覚障害者特殊学校で、校長他数名の教職員が長期に渡って障害児に性的暴行や虐待を加えていたことがわかった。 マスコミにも取り上げられようやく警察が動きだし、事件は解決に向かったかに思えたが「権力」の壁に阻まれ、一部の被害者家族が告訴を 取り下げると世論は急激に冷えていき、人々の記憶から消えかけていった。
しかし、2009年、著者により事件を元にした本著が世に出されることを機に国民の心を動かし、そして遂に政治をも動かし、学校も廃校、 校長達も処分となる結果となった。 「執行猶予で釈放される彼らの軽い量刑が手話によって伝えられた瞬間、法廷は聴覚障害者の発する異様な叫び声でいっぱいになった」 という短い新聞記事を読んで本著の構想が生まれたという。
男女を問わず幼い子ども達が(もちろん大人も)性的被害に遭うという事実は 韓国だけではなく日本を含め世界共通のあってはならない犯罪である。計り知れない大きな傷を負ってしまう性犯罪のことを他人事ではなく真剣に考え、無くしていきたいと心から思えた1冊である。

 

男しか行けない場所に女が行ってきました

田房永子
イースト・プレス 2015年


男しか行けない場所、風俗。ソープランド、デリヘル、オナニークラブ、パンチラ喫茶におっぱいパブ等々…。 そんな場所に行けない女たちが知らないところで何が起きているのか。(見たくもないけど)見て見ぬ振りをして許容することが「大人の女」なのか。 AKBやJKビジネスなど女の商品化の隆盛と共に風俗化しているとしか思えない世の中に苛立ちを覚える現在。エロ本のライター業などをしていた著者は 男たちが堂々と作り上げてきた「風俗の世界」「男が求める女の規範」をぶった切っていく。下ネタ用語の連発に事実とはいえちょっと率直過ぎて引き 気味に笑えてしまう本書だが、納得することが多い。まずはご一読あれ。

 

大人の問題提起シリーズ さけび

ももち麗子
講談社コミック 2019年


この本は、職場でセクシュアル・ハラスメント(以下、セクハラ)に遭った、ある女性のこころの叫びを描いたものである。女性たちの多くがセクハラを受けたときに抱え得る戸惑いや痛み、恐怖などの心の状態が詳細に表現されていて、読みながら決して人ごととは思えない気持ちになってくる。
加害者からの愛の告白という形で始まったセクハラに対し、初めは、このことを誰かに言ったら相手(加害者)を傷つけてしまうのではないかと主人公は思った。しかしエスカレートしていく執拗な「誘い」に対して、断ったらどうなるのか、いっそこのまま言いなりになれば苦しまなくてすむのだろうか、まじめに仕事をしたいのにどうしてそれができないのか…困惑と恐怖で精神的に追い詰められていく主人公。次々に湧き上がる心の悲鳴を声に出して叫ぶことができたらどんなに楽になれるだろう。しかしそれは簡単なことではなかった。
注目してほしいのは、その加害者のさらなるパワハラによって職場を終われた主人公が、後に女性支援団体でセクハラやDVなどの問題に支援者として関わっていくことでトラウマが次第に回復し、被害を受けた後の新たな成長の兆しがみられるところである。